経営と現場の交差点

【第9回】「脱炭素」は大企業だけの話ではない


CO2削減・環境規制への対応


「うちみたいな中小企業に、EVトラックなんて無理ですよ」

ある運送会社の社長が、そう言って首を振った。カーボンニュートラル、脱炭素、環境対応──。ニュースでは聞くが、自社には関係ない話だと思っていた。

しかし、本当にそうだろうか。


迫りくる環境規制、広がる取引条件


国のカーボンニュートラル方針のもと、物流分野にもCO2削減の要請が強まっている。

モーダルシフト、共同配送、EVトラック導入──。これらは、大企業だけの話ではなくなりつつある。

荷主の中には、「環境対応ができていない会社とは取引しない」という方針を打ち出すところも出てきた。サプライチェーン全体での排出量削減が求められる中、物流事業者も「選ばれる側」として対応を迫られている。


3つの声──現場、経営、第三者


環境対応の現状を、3人に聞いた。

まずは、愛知県で自動車部品の輸送を担うI物流の社長、山田さん(仮名・53歳)。

「取引先から『CO2排出量のデータを出してくれ』と言われて、正直困った。どうやって計算するのか、何を報告すればいいのか。専門の部署もないし、人もいない」

山田さんは、ひとまず外部のコンサルタントに相談した。しかし、「お金がかかる割に、すぐに効果が出るわけではない」とジレンマを感じている。

次に、同社の配車担当、内田さん(仮名・40歳)。

「エコドライブって言われるけど、具体的に何をすればいいのかわからない。燃費を良くしろ、急ブレーキをするな、とは言うけど、数字で見せてもらわないと、自分がどうなのかわからない」

内田さんは、ドライバーへの指導に苦慮している。「感覚ではなく、データで話せたら説得力がある」と感じている。

第三者として、環境経営に詳しいESGアナリストの森氏に話を聞いた。

「中小企業の環境対応は、大企業と同じことをする必要はありません。まずは、自社の排出量を『見える化』すること。それができれば、何をどう減らせばいいかが見えてくる。小さな改善の積み重ねが、大きな差になります」


私が感じたこと


取材を通じて感じたのは、「知らないことへの恐れ」が、対応を遅らせているということだ。

環境規制、CO2削減と聞くと、「難しそう」「お金がかかりそう」「うちには関係ない」と思いがちだ。しかし、実際には「今できること」は意外と多い。

エコドライブの推進、アイドリング削減、ルートの最適化──。これらは、特別な投資なしでも始められる。そして、その効果を測定するためのデータは、すでに手元にある可能性がある。


明日からできること、仕組みで変えること


環境対応は、「できることから始める」が正解だ。

すぐできる打ち手

  • 燃費データを記録・比較する:ドライバーごと、車両ごとの燃費を把握する
  • エコドライブの基本を共有する:急発進・急ブレーキを減らす、アイドリングを控える
  • 配送ルートの無駄をチェックする:空車回送、非効率なルートがないか確認する

仕組み化の打ち手

  • デジタルタコグラフでエコドライブを見える化:急加速、急減速、アイドリング時間などを数値化する
  • 燃費改善の目標を設定する:データに基づいた具体的な目標を立て、進捗を管理する
  • CO2排出量の簡易計算ツールを導入する:荷主への報告に備え、自社の排出量を把握する

失敗しやすい落とし穴と回避策

  • 「大きな投資が必要」と思い込む:まずは「見える化」から始めれば、投資は最小限で済む
  • ドライバーに「我慢」を求める:データでフィードバックしないと、モチベーションが続かない
  • 「環境対応は儲からない」と決めつける:燃費改善はコスト削減に直結する

まとめ


環境対応は、「やらされること」ではなく、「会社を強くすること」だ。

燃費が良くなれば、コストが下がる。データが揃えば、荷主との交渉材料になる。取り組みを発信すれば、採用にもプラスになるかもしれない。

「うちには関係ない」ではなく、「うちでもできることがある」と考えてみてほしい。

エコドライブの見える化、燃費管理、CO2データの整備など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。

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