経営と現場の交差点

【第7回】入っては辞める、の連鎖を断つ


人材定着・働き方改革と組織づくり


「また辞めるのか……」

採用担当者のため息が、事務所に響いた。3カ月前に入社した若手ドライバーが、「思っていたのと違った」と退職届を出してきた。


採用しても定着しない、という問題


ドライバー不足が叫ばれる中、採用に成功しても、定着しなければ意味がない。

「入ってはすぐ辞める」の連鎖が続けば、採用コストは膨らみ、既存社員の負担は増え、職場の雰囲気も悪化する。悪循環だ。

法令対応としての労働時間管理は進んでいる。しかし、「働きやすさ」は労働時間だけでは測れない。休暇の取りやすさ、評価の納得感、人間関係──。これらが総合的に満たされなければ、人は離れていく。


3つの声──現場、経営、第三者


人材定着の難しさを、3人に聞いた。

まずは、長野県で精密機器の輸送を担うG運送の社長、小林さん(仮名・50歳)。

「ドライバーの待遇は、この5年でかなり改善した。給与も上げた、休みも増やした。でも、それだけでは足りないみたいで……。何が不満なのか、正直わからないときがある」

小林さんは、退職者との面談を自ら行っている。しかし、「本音を言ってくれない」と感じることも多いという。

次に、同社を1年で退職した元ドライバー、川島さん(仮名・28歳)。

「給料は悪くなかった。でも、配車の組み方が不公平に感じた。ベテランさんは楽なルート、新人はきついルート。文句を言える雰囲気じゃなかったし、自分だけ我慢するのが嫌になった」

川島さんは今、別業界で働いている。「物流の仕事自体は嫌いじゃなかった」と振り返る。

第三者として、人材コンサルタントの北村氏に話を聞いた。

「定着の鍵は『公平感』と『成長実感』です。頑張っても報われない、何年経っても同じ仕事──。そう感じると、人は離れます。逆に、小さくても成長を実感できれば、続けるモチベーションになる」


私が感じたこと


取材を通じて痛感したのは、「経営者の認識と、社員の実感のズレ」だ。

経営者は「待遇を改善した」と思っている。しかし、現場の社員は「公平に扱われていない」と感じている。このズレが、退職という形で表面化する。

問題は、このズレに気づくのが「辞めた後」であることだ。辞める前に気づければ、対処できたかもしれない。

「配車が属人的」「ベテラン頼み」「管理職が休めない」──。これらは、よく聞く課題だ。しかし、それを「仕方ない」で片づけている限り、定着率は上がらない。


明日からできること、仕組みで変えること


人材定着は、「制度」と「運用」の両面から取り組む必要がある。

すぐできる打ち手

  • 定期的な1on1面談を実施する:月1回、15分でもいい。「何か困っていることはないか」を聞く
  • 配車ルールを明文化する:「なぜこのルートか」を説明できる状態にする
  • 小さな成功を認める:日報のコメント、朝礼での一言など、承認の機会を増やす

仕組み化の打ち手

  • 運行データで配車の公平性を可視化する:距離、拘束時間、休憩回数などを比較できるようにする
  • 評価制度を見直す:勤続年数だけでなく、安全運転、燃費、顧客評価などを反映する
  • 管理職の負担を分散する:点呼業務の効率化、配車システムの導入で、一人に集中しない体制をつくる

失敗しやすい落とし穴と回避策

  • 「話を聞く」だけで終わる:聞いた内容を改善につなげないと、「どうせ変わらない」と思われる
  • 制度をつくっても運用しない:形骸化すると、逆効果になる
  • 「辞める人が悪い」と考える:組織の問題として捉え直す姿勢が必要

まとめ


人材定着は、「採用の後」から始まる経営課題だ。

入ってくれた人が長く働ける環境をつくる。それが、結果的に採用コストを下げ、組織の安定につながる。

「見える化」と「公平性」がキーワードだ。データで可視化し、誰もが納得できる仕組みをつくる。

運行データの活用、配車の最適化、点呼業務の効率化など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。

関連記事

TOP