










デジタル化・DXの遅れがもたらす静かな危機
「配車表、まだ手書きなんですよ」
栃木県の運送会社を訪ねたとき、事務所の壁に大きなホワイトボードがあった。ドライバーの名前、車両番号、配送先──。すべて手書きで、毎日誰かが書き換えている。
「このままでいい」の先にあるもの
物流業界のデジタル化の遅れは、長年指摘されてきた。運行管理、受発注、配車、請求──。多くの中小物流会社では、これらが紙ベースや電話・FAXに依存している。
「今まで回ってきたから」「新しいシステムを入れる余裕がない」「覚える時間がない」。現場からはそんな声が聞こえる。
しかし、そのままでは、大企業との効率格差は広がる一方だ。輸送効率改善やデータ活用で後れを取れば、競争力は落ち、選ばれない会社になっていく。
3つの声──現場、経営、第三者
デジタル化の現状を、3人に聞いた。
まずは、静岡県で建材配送を手がけるF運輸の社長、高橋さん(仮名・55歳)。
「正直、パソコンが苦手なんです。社員もそう。若い子がいれば任せられるけど、うちは平均年齢が50を超えている。新しいことを始めるエネルギーがない」
高橋さんは、ITツールの導入を検討したことがある。しかし、「説明を聞いても、うちで使いこなせる気がしなかった」と振り返る。
次に、同社の事務担当、石川さん(仮名・47歳)。
「毎月の請求書を作るのに、丸2日かかります。運行記録を見て、手で計算して、Excelに入力して……。ミスがあると、また最初から。本当は、ボタン一つで出てきてほしい」
石川さんは、残業してその作業をこなしている。「自分が倒れたら、誰もできない」という不安も抱えている。
第三者として、物流テックに詳しいITコンサルタントの村上氏に話を聞いた。
「中小企業のDXは、いきなり大きなシステムを入れようとすると失敗します。まずは『一番困っていること』を一つ解決する。それで成功体験を積んで、次に進む。この段階的アプローチが大事です」
私が感じたこと
取材を通じて感じたのは、「変わりたくても、変わり方がわからない」という苦悩だ。
経営者は、このままではまずいと感じている。しかし、何から手をつければいいかわからない。現場は、日々の業務に追われ、新しいことを学ぶ余裕がない。
このギャップを埋めるには、「小さく始める」ことが鍵だ。
すべてを一度に変えようとするから、挫折する。まずは一つ、目に見える効果が出るところから始める。そうすれば、「やればできる」という実感が生まれ、次のステップに進める。
明日からできること、仕組みで変えること
デジタル化は、「導入」がゴールではない。「使いこなす」までが勝負だ。
▼すぐできる打ち手
- 「一番困っていること」をリストアップする:請求書作成、配車連絡、運行記録など、ボトルネックを特定する
- 無料ツールで試してみる:Googleスプレッドシート、LINEグループなど、身近なところから始める
- 若手や外部の力を借りる:IT に詳しい人に「1時間だけ教えて」とお願いする
▼仕組み化の打ち手
- デジタルタコグラフの導入:運行データを自動で取得し、手入力の負荷をなくす
- 自動点呼システムの活用:点呼記録を電子化し、管理者の業務時間を削減する
- 帳票の自動生成:運行データから請求書、報告書を自動で作成する仕組みを整える
▼失敗しやすい落とし穴と回避策
- 「高機能」に惹かれて導入する:使いこなせない機能は宝の持ち腐れ
- 現場に説明なく導入する:「押しつけ」と感じると、使ってもらえない
- 導入して終わりにする:定着するまでのサポート体制が必要
まとめ
デジタル化の遅れは、じわじわと競争力を奪っていく。
「今まで通り」で何とかなっている間は問題が見えにくい。しかし、気づいたときには手遅れ、というケースは少なくない。
小さな一歩から始めよう。その一歩を支える仕組みが、今はある。
運行データの見える化、点呼業務の効率化、帳票作成の自動化など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。