








【第4回】上がるコスト、変わらない運賃
燃料・人件費・車両コストの高騰と経営の綱渡り
「ガソリンを入れるたびに、気が重くなる」
都内の運送会社を訪ねた際、ドライバーの一人がそうつぶやいた。燃料価格の高騰は、現場で働く人たちの肌感覚に直結している。
利益が消えていく構造
燃料費、人件費、車両価格、保険料、整備費──。物流事業を取り巻くコストは、この数年で大きく上昇した。
一方で、運賃の値上げは容易ではない。荷主との力関係、競合他社との価格競争、長年の取引慣行。これらが壁となり、コスト上昇を転嫁しきれない会社が少なくない。
結果として、もともと薄い利益率がさらに圧迫される。資金繰りに余裕がなくなり、設備投資や人材確保が後回しになる。悪循環だ。
3つの声──現場、経営、第三者
この問題を、異なる角度から見てみた。
まずは、東京都内で引越し・配送を手がけるD運送の社長、鈴木さん(仮名・60歳)。
「燃料費は毎月の経費で一番変動が大きい。予算を組んでも、月末に見るとオーバーしている。かといって、荷主さんに『燃料サーチャージをください』とは言いにくい。言ったら、他社に流れるかもしれない」
鈴木さんは、自社の車両を減らし、協力会社への外注を増やすことでしのいでいる。しかし、「それも限界がある」と顔を曇らせた。
次に、同社の整備担当、松田さん(仮名・55歳)。
「部品代が上がっている。トラックの部品は輸入品も多いから、為替の影響も大きい。昔は『壊れたら直す』でよかったけど、今は予防整備をしっかりやらないと、大きな出費になる」
松田さんは、車両の状態を日々チェックし、小さな異常を見逃さないよう努めている。「データで車両の状態が見えれば、もっと効率的にできるのに」と話す。
第三者として、中小企業診断士の山口氏に話を聞いた。
「コスト高の中で生き残るには、『どこで利益を出すか』を明確にする必要がある。薄利多売の発想から脱却し、付加価値の高いサービスに絞り込む。そのためには、自社のコスト構造を正確に把握することが第一歩です」
私が感じたこと
取材を重ねて感じたのは、「見えないコスト」の存在だ。
燃料費や人件費は数字に出やすい。しかし、管理者の残業、事務担当の手待ち時間、非効率な運行による無駄な走行距離──。これらは、意識しないと見えてこない。
経営者は「なんとなく苦しい」と感じているが、何がどれだけ利益を圧迫しているかを具体的に把握できていないケースが多い。
現場は「いつも通り」にやっている。しかし、その「いつも通り」に無駄が潜んでいることに気づいていない。
このギャップを埋めるには、データで「見える化」するしかない。
明日からできること、仕組みで変えること
コスト高への対応は、「削る」だけでなく「見える化して最適化する」発想が必要だ。
▼すぐできる打ち手
- 燃費の記録をドライバーごとにつける:同じ車両でも、運転の仕方で燃費は変わる
- 運行ルートの見直し会議を月1回開く:「いつものルート」に無駄がないか検証する
- 整備記録を一元管理する:車両ごとの故障傾向を把握し、予防整備に活かす
▼仕組み化の打ち手
- デジタルタコグラフで運行データを自動取得:燃費、速度、急ブレーキなどを可視化する
- エコドライブ指導の仕組み化:データに基づいて、具体的な改善ポイントをフィードバックする
- 車両管理システムの導入:整備スケジュール、保険更新、車検時期を一元管理する
▼失敗しやすい落とし穴と回避策
- 「経費削減」を掛け声だけで終わらせる:具体的な目標と計測方法がないと、効果が出ない
- ドライバーの努力だけに頼る:仕組みで支えないと、属人的になり継続しない
- 安全を犠牲にする:整備費を削りすぎると、重大事故のリスクが高まる
まとめ
コスト高騰は、経営の前提条件が変わったことを意味する。
「昔のやり方」では利益が出ない時代に、どう適応するか。その鍵は、データに基づいた意思決定だ。
運行データの活用、燃費改善、車両管理の効率化など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。