経営と現場の交差点

【第3回】荷主の義務、運送会社のジレンマ


2026年問題・物流効率化法への対応


「また書類が増えるのか……」

神奈川県の中小運送会社で、事務担当の女性がため息をついた。

2026年に施行が見込まれる改正物流関連法。荷主側にも物流効率化の義務が課されることになり、その報告や協議のための書類作成が、運送会社にも波及している。

「効率化」の名のもとに、何が起きているか

物流効率化法の改正は、表向きには「荷主と物流事業者の連携強化」を掲げている。

しかし、現場で聞こえてくるのは、少し違う声だ。

「荷主さんから『効率化のデータを出してくれ』と言われる。でも、そのデータを取るための作業で、現場の時間が削られる」

「協議に参加しろと言われても、日中は配車や運行管理で手が離せない。夜に資料を作ることになる」

合理化要求への対応、データ提出、協議への参加──。これらは「書類・説明対応」の事務負担を増やし、本来注力すべき現場改善に割けるリソースを圧迫している。


3つの声──現場、経営、第三者


この問題について、3人の声を聞いた。

まずは、茨城県で日用品の配送を担うC運輸の社長、中村さん(仮名・52歳)。

「荷主さんとの関係は大事にしたい。でも、『効率化』と言われて、結局しわ寄せがこっちに来る感覚がある。うちみたいな中小は、交渉力がない。言われたことをやるしかない」

中村さんは、法改正の趣旨には賛同している。しかし、「理念と現実のギャップ」に戸惑いを隠せない。

次に、同社の事務担当、吉田さん(仮名・34歳)。

「報告書のフォーマットが荷主ごとに違うんです。A社向け、B社向け、C社向け……。共通化してくれれば、どれだけ楽か。でも、そんなこと言える立場じゃないですよね」

吉田さんは、業務の合間を縫ってExcelと格闘している。「本当は、もっとドライバーのサポートに時間を使いたい」と本音を漏らした。

第三者として、サプライチェーン改革に詳しいコンサルタントの高橋氏に話を聞いた。

「2026年問題は、荷主と物流事業者の関係を見直すチャンスでもある。ただ、そのためには『対等な対話』が必要。データを出す側が一方的に負担を負う構図では、本質的な効率化は進まない」


私が感じたこと


取材を通じて感じたのは、「誰のための効率化か」という問いだ。

法改正の趣旨は、物流全体の持続可能性を高めること。しかし、その実現過程で、中小運送事業者に負担が集中してしまっては、業界全体の疲弊を招く。

経営者は、荷主との関係悪化を恐れて声を上げにくい。現場は、増える事務作業に追われながら、日々の運行を回している。

このギャップを埋めるには、まず「何にどれだけの時間がかかっているか」を可視化することが必要だ。データがあれば、交渉の土台ができる。

明日からできること、仕組みで変えること

2026年問題への対応は、「守り」と「攻め」の両面が必要だ。


▼すぐできる打ち手


事務作業の棚卸し:何に、誰が、どれだけ時間をかけているかを書き出す

報告フォーマットの標準化を荷主に提案する:「共通化すれば双方の負担が減る」という観点で

社内の情報共有を見直す:口頭伝達をなくし、記録を残す習慣をつける


▼仕組み化の打ち手


運行データの自動取得・蓄積:デジタルタコグラフで荷待ち時間、運行時間、休憩時間を記録する

点呼記録の電子化:紙の点呼簿からの転記作業をなくし、データとして活用できる形にする

帳票作成の自動化:運行データを報告書フォーマットに自動変換する仕組みを検討する


▼失敗しやすい落とし穴と回避策


「言われた通りにやる」だけで終わる:自社の負担を定量化しないと、交渉の材料がない

属人的な対応を続ける:担当者が辞めると、ノウハウが消える

IT投資を後回しにする:手作業の限界は、人員増では解決できない


まとめ


2026年問題は、物流業界の構造変化を加速させる。

「荷主の義務」が強化される中で、運送会社は「対等なパートナー」としての立ち位置を確立できるかが問われる。

そのためには、データに基づいた対話が不可欠だ。

運行データの見える化、点呼・帳票業務の効率化など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。

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