経営と現場の交差点

【第8回】「今日届けてほしい」の裏側で


EC拡大による小口・多頻度配送対応


「昔は1日10件だった配送が、今は30件を超える」

都内の宅配を担当するドライバーが、そう語った。荷物は小さくなり、届け先は増えた。走る距離は変わらないのに、仕事は3倍になっている。


便利さの代償を、誰が払っているか


EC市場の拡大は、物流の姿を大きく変えた。

小口化、多頻度化、短納期化──。消費者は「明日届く」「今日届く」が当たり前になった。しかし、その「当たり前」を支えているのは、現場のドライバーと運送会社だ。

積載効率は悪化し、距離あたりの収益性は低下する。再配達や時間指定への対応が労務負荷となり、ドライバーの拘束時間とストレスは増加している。


3つの声──現場、経営、第三者


EC配送の実態を、3人に聞いた。

まずは、神奈川県で宅配事業を手がけるH運送の社長、青木さん(仮名・45歳)。

「EC荷物は単価が低い。でも、断ると仕事がなくなる。受けると利益が出ない。ジレンマです。効率を上げるしかないけど、上げ方がわからない」

青木さんは、配送ルートの見直しを何度も試みた。しかし、「毎日違う届け先があるから、パターン化しにくい」と悩んでいる。

次に、同社のドライバー、田中さん(仮名・35歳)。

「再配達が一番きつい。届けに行って不在、また行って不在。そのたびに時間が取られる。お客さんは悪気ないんでしょうけど、こっちは1分単位で動いてるんですよ」

田中さんは、1日の配送件数を手帳に記録している。「40件を超えると、帰りが9時を過ぎる」という。

第三者として、ラストワンマイル物流に詳しい研究者の中川氏に話を聞いた。

「EC物流の課題は、『誰がコストを負担するか』です。消費者は安さと速さを求め、ECプラットフォームは送料無料をうたう。そのしわ寄せが、運送会社とドライバーに来ている。持続可能な仕組みとは言えません」


私が感じたこと


取材を通じて感じたのは、「見えないところで支える人たち」への敬意だ。

私たちが「便利だ」と享受しているサービスの裏側で、誰かが走り回っている。その人たちが疲弊し、離れていけば、「当たり前」は崩れる。

運送会社としてできることは、効率化だ。限られたリソースで、どれだけ無駄を省けるか。そのためには、データに基づいた意思決定が欠かせない。

「勘と経験」だけでは、複雑化する配送には対応しきれない。


明日からできること、仕組みで変えること


EC配送の効率化は、「地道な改善の積み重ね」が鍵だ。

すぐできる打ち手

  • 配送実績を記録する:件数、所要時間、再配達回数などを毎日記録する
  • 再配達の多い時間帯・エリアを分析する:パターンが見えれば、対策が打てる
  • ドライバーの声を集める:「ここが非効率」という現場の気づきを吸い上げる

仕組み化の打ち手

  • デジタルタコグラフで運行データを取得:走行ルート、停車時間、走行距離を可視化する
  • 配送ルートの最適化ツールを検討する:データに基づいた効率的なルート提案
  • 荷主との交渉材料をつくる:再配達率、平均配送時間などのデータを提示し、条件改善を求める

失敗しやすい落とし穴と回避策

  • 「件数をこなせ」と無理な目標を設定する:事故や離職のリスクが高まる
  • ドライバー任せにする:会社として仕組みで支えないと、個人の負担が増すだけ
  • 効率化だけを追求する:サービス品質が落ちると、顧客離れにつながる

まとめ


EC拡大は止まらない。物流に求められるスピードと量は、今後も増え続けるだろう。

その中で生き残るには、「効率」と「持続可能性」のバランスを取る必要がある。

データを活用し、無駄を省き、ドライバーが健康に働ける環境をつくる。それが、結果的に顧客へのサービス品質も守ることになる。

運行データの見える化、配送効率の改善、労働時間管理など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。

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