経営と現場の交差点

【第6回】紙とFAXと、止まった時計


デジタル化・DXの遅れがもたらす静かな危機


「配車表、まだ手書きなんですよ」

栃木県の運送会社を訪ねたとき、事務所の壁に大きなホワイトボードがあった。ドライバーの名前、車両番号、配送先──。すべて手書きで、毎日誰かが書き換えている。


「このままでいい」の先にあるもの


物流業界のデジタル化の遅れは、長年指摘されてきた。運行管理、受発注、配車、請求──。多くの中小物流会社では、これらが紙ベースや電話・FAXに依存している。

「今まで回ってきたから」「新しいシステムを入れる余裕がない」「覚える時間がない」。現場からはそんな声が聞こえる。

しかし、そのままでは、大企業との効率格差は広がる一方だ。輸送効率改善やデータ活用で後れを取れば、競争力は落ち、選ばれない会社になっていく。


3つの声──現場、経営、第三者


デジタル化の現状を、3人に聞いた。

まずは、静岡県で建材配送を手がけるF運輸の社長、高橋さん(仮名・55歳)。

「正直、パソコンが苦手なんです。社員もそう。若い子がいれば任せられるけど、うちは平均年齢が50を超えている。新しいことを始めるエネルギーがない」

高橋さんは、ITツールの導入を検討したことがある。しかし、「説明を聞いても、うちで使いこなせる気がしなかった」と振り返る。

次に、同社の事務担当、石川さん(仮名・47歳)。

「毎月の請求書を作るのに、丸2日かかります。運行記録を見て、手で計算して、Excelに入力して……。ミスがあると、また最初から。本当は、ボタン一つで出てきてほしい」

石川さんは、残業してその作業をこなしている。「自分が倒れたら、誰もできない」という不安も抱えている。

第三者として、物流テックに詳しいITコンサルタントの村上氏に話を聞いた。

「中小企業のDXは、いきなり大きなシステムを入れようとすると失敗します。まずは『一番困っていること』を一つ解決する。それで成功体験を積んで、次に進む。この段階的アプローチが大事です」


私が感じたこと


取材を通じて感じたのは、「変わりたくても、変わり方がわからない」という苦悩だ。

経営者は、このままではまずいと感じている。しかし、何から手をつければいいかわからない。現場は、日々の業務に追われ、新しいことを学ぶ余裕がない。

このギャップを埋めるには、「小さく始める」ことが鍵だ。

すべてを一度に変えようとするから、挫折する。まずは一つ、目に見える効果が出るところから始める。そうすれば、「やればできる」という実感が生まれ、次のステップに進める。


明日からできること、仕組みで変えること


デジタル化は、「導入」がゴールではない。「使いこなす」までが勝負だ。

すぐできる打ち手

  • 「一番困っていること」をリストアップする:請求書作成、配車連絡、運行記録など、ボトルネックを特定する
  • 無料ツールで試してみる:Googleスプレッドシート、LINEグループなど、身近なところから始める
  • 若手や外部の力を借りる:IT に詳しい人に「1時間だけ教えて」とお願いする

仕組み化の打ち手

  • デジタルタコグラフの導入:運行データを自動で取得し、手入力の負荷をなくす
  • 自動点呼システムの活用:点呼記録を電子化し、管理者の業務時間を削減する
  • 帳票の自動生成:運行データから請求書、報告書を自動で作成する仕組みを整える

失敗しやすい落とし穴と回避策

  • 「高機能」に惹かれて導入する:使いこなせない機能は宝の持ち腐れ
  • 現場に説明なく導入する:「押しつけ」と感じると、使ってもらえない
  • 導入して終わりにする:定着するまでのサポート体制が必要

まとめ


デジタル化の遅れは、じわじわと競争力を奪っていく。

「今まで通り」で何とかなっている間は問題が見えにくい。しかし、気づいたときには手遅れ、というケースは少なくない。

小さな一歩から始めよう。その一歩を支える仕組みが、今はある。

運行データの見える化、点呼業務の効率化、帳票作成の自動化など、お困りのことがあれば、中央矢崎サービス㈱にご相談ください。

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