












2024年問題の本格影響──労働時間規制と現場の苦悩
夕方6時、ある運送会社の事務所で、配車担当者がパソコンの前で頭を抱えていた。
「どう組んでも、この運行だと拘束時間がオーバーする……」
2024年4月に施行された時間外労働の上限規制。「年960時間」という数字は、現場の運行計画を根底から揺さぶっている。
「今まで通り」が、もう通用しない
働き方改革関連法の適用猶予が終わり、物流業界にも本格的な労働時間規制がやってきた。
時間外労働の年960時間上限、改善基準告示による拘束時間・休息期間の見直し。これらは「ドライバーを守るため」の制度だが、現場では「回せない」という悲鳴が上がっている。
従来の運行形態では便数を維持できず、売上やサービスレベルの低下が避けにくい。荷主からの要求は変わらないのに、稼働できる時間は減る。その板挟みの中で、管理者もドライバーも疲弊している。
3つの声──現場、経営、第三者
この問題を、異なる立場から見つめてみた。
まずは、千葉県で一般貨物運送業を営むB物流の運行管理者、佐藤さん(仮名・45歳)。
「以前は『ちょっと残業して』で何とかなっていたんです。でも今は、その『ちょっと』が命取りになる。1人の運行時間がオーバーすると、全体のシフトが崩れる。パズルを組むような毎日です」
佐藤さんは、週末も自宅でシフト表と向き合うことが増えた。「管理者の負担は、むしろ増えている」と苦笑する。
次に、同社のドライバー、木村さん(仮名・38歳)。
「正直、給料は減りました。残業代が減った分、手取りが下がった。でも、家族と過ごす時間は増えた。どっちがいいかは……複雑ですね」
木村さんは、制度の趣旨は理解している。しかし、収入減は家計に直結する。「このままだと、他の業界に転職する仲間が出てくるかもしれない」と懸念を口にした。
第三者として、元国土交通省職員で現在は物流政策に詳しい井上氏に話を聞いた。
「規制は『守られるべきもの』として設計されています。しかし、現場の実態と制度の間にギャップがある。そのギャップを埋めるのは、各社の工夫と、荷主との交渉です。行政だけでは解決できない領域が大きい」
私が感じたこと
取材を通じて痛感したのは、「時間」という資源の有限性だ。
これまで、物流は「何とかする」文化で回ってきた。ドライバーが踏ん張り、管理者が調整し、ギリギリで荷物を届ける。しかし、その「何とか」には、誰かの時間と体力が犠牲になっていた。
2024年問題は、その構造を変えることを迫っている。
経営としては、売上維持とコンプライアンスの両立が課題だ。現場としては、収入と労働時間のバランスが問題になる。この両者の認識をすり合わせないまま、制度対応だけを進めても、どこかで破綻する。
明日からできること、仕組みで変えること
労働時間規制への対応は、「守る」だけでなく「活かす」視点が必要だ。
▼すぐできる打ち手
- 運行計画の見直し会議を設ける:週1回、配車担当とドライバーで「ムリ・ムダ」を洗い出す
- 荷待ち時間の記録を徹底する:データがあれば、荷主との交渉材料になる
- 労働時間の「見える化」:ドライバー本人にも、自分の拘束時間を把握させる
▼仕組み化の打ち手
- デジタルタコグラフによる運行データの自動取得:手入力の負荷を減らし、正確な記録を残す
- 自動点呼システムの導入:点呼業務を効率化し、管理者の時間を運行計画に振り向ける
- 勤怠管理システムとの連携:リアルタイムで労働時間を把握し、超過リスクを事前に検知する
▼失敗しやすい落とし穴と回避策
- 「ドライバーの頑張り」で乗り切ろうとする:短期的には回っても、離職や事故リスクが高まる
- 荷主との交渉を後回しにする:データなしで交渉しても説得力がない
- 管理者の負担を見過ごす:現場を守るはずの制度が、管理者を潰しては本末転倒
まとめ
2024年問題は、物流業界全体の働き方を問い直す契機だ。
「規制だから仕方ない」ではなく、「規制を機に、より良い働き方をつくる」という発想が求められる。
そのためには、正確なデータと、それを活かす仕組みが不可欠だ。
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