自動点呼とはそもそも何か?メリットと課題について

令和5年4月より運送業界において新たなる試みが生まれました。

「自動点呼」の導入です。これまでのIT点呼に加え、遠隔点呼・業務後自動点呼が対面による点呼と同等であると改正されました。

しかし、自動点呼とはそもそも何か。これが行われることでどのようなメリットが考えられるのかを今回はご紹介します。

自動点呼とは

機器を使って点呼を無人で行うシステムとなっていて、生体認証や酒気帯び測定などを自動で実施します。国土交通省の認定機器を使用し要件を遵守した上で、業務後のみ実施可能です。

そのため、現在業務前に行う点呼は運転者の健康状態や運行可否の判断が必要なため、引き続き対面で行う必要があります。

業務後自動点呼はアルコールチェックや運行状況の報告などを自動化し、運行管理者の負担軽減と安全性の向上を図りますが、緊急時には運行管理者が対応できる体制が求められているためです。

そのため現時点では業務前の自動点呼は認められていません。しかし、国土交通省の方針としては、業務前にも自動点呼ができるように継続的な検討を進めており、今後の法整備や改正に伴って制度が導入される可能性があります。

なお、2023年時点での実証実験が進められているため、ほぼ業務前点呼も秒読み段階に入っていると言ってもいいでしょう。

自動点呼を導入するメリット

業務前の自動点呼導入がされることを勘案しても想像しうるメリットは、とてつもなく大きなものとなるでしょう。

・業務の効率性が向上する

2024年問題において何よりも課題となっている人手不足を解消するためには、業務の効率化が不可欠となります。対面点呼にかかる時間が解消される分だけ効率的に業務を進めることが可能に。

本来の役割である安全運行の確保や教育などに注力できるようになり、全体的な運行管理の質が向上し、運転手の安全を確保できるようになります。

・運転手の利便性が向上する

時間や場所の制約を受けずに点呼を完了できます。

また、運転手は自分の都合に合わせて点呼の結果や指示事項をシステム上で確認することができるので、運転手の時間の効率化にもつながります。

・ヒューマンエラーの排除

これまで対面で行われてきたために生じていたヒューマンエラーについても防ぐことが可能となります。点呼した記録などがデータ化され、記録の管理などが容易になるためです。これによって分析や企業内での改善なども行われ、職場環境の改善などにも役立つ可能性を秘めているでしょう。

自動点呼を導入するデメリット

このようなメリットがある反面、自動点呼導入することでデメリットも生じます。主な面で言うと、これまで対面などで行われてきた物が機器を使用するものとなるために起きるコストです。

・導入コスト

機器そのものについてのコストはそれほどでもないかもしれませんが、様々な条件を整える必要があります。

それらについてのシステム開発と導入、それに伴う保守・運用については当然ながら継続して行わねばなりません。以上のことから、継続的にコストがかかるリスクがあります。

・時間的なコスト

システム開発についても一定の時間を要します。おおよそシステム開発においてかかる時間は大がかりなもので最大半年かかります。これらは正常に動作するかというテストも含めてとなります。

一般的に開発にかかる時間が増えれば、それだけ金銭面のコストも増大します。

・人員コスト

また、従業員教育を行う上でも対面あるいはIT点呼などと異なる部分もあるため、練習やフォローアップも必要となります。また、保守と運用をしなければならないため人員的なコストも必要となるでしょう。

自動点呼機器に関する助成金情報

ただし、このようなコストがかかると勘案したとしても自動点呼を求める声は強く、利便性の向上に繋がることはいうまでもありません。そのような中、全日本トラック協会が特別なサポートを始めています。

助成対象者

各都道府県トラック協会の会員事業者で、中小事業者を対象

・資本金の額または出資の総額が、3億円以下の会社

または

・常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

助成要件

助成対象とする自動点呼機器は、国土交通省の認定を受けたもので令和4年4月1日以降に契約もしくは利用開始したもの

※申請の際に、国土交通省に届出をして受理された「業務後自動点呼の実施にかかる届出書」の写し(受付印があるもの)の添付が必須

助成額

対象となる自動点呼機器の導入費用(周辺機器、セットアップ費用及び契約期間中のサービス利用料を含む)(上限10万円)

※当該年度内の申請台数は各協会1事業者あたり1台分を上限。ただし所属する協会の域内に安全性優良事業所 (Gマーク事業所)を有する事業者は2台分(上限20万円)

参考:https://jta.or.jp/member/shien/tenko2023.html

また、国土交通省からも重大事故を防ぐための先進的機器導入のための補助金として補助額は導入経費の1/2で1申請あたりの上限は80万円として補助を行っており、その項目の中に自動点呼機器についても対象機器の1つとして入っております。

自動点呼機器導入を希望される方はぜひご検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

自動点呼を導入することによって、今後多くの物流だけに限らず自動車運転業全般の業務効率化が図られることは間違いありません。

一方、システム管理や人員教育といった新たなコストが生まれることも当面の課題としてあり、こうした問題をどのように解決していくのかが課題となるでしょう。

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